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6月26日号 THF Communication No.266

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■■■                        
■■        THF Communication !!      
■                   <No. 266>
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◆What's New ◆
~最新のTHF関連トピックスを紹介します~

□田中喜代次(THF代表取締役、筑波大学名誉教授)コラム
水分+果物補給+塩分制限+服薬管理なしのリスクを考えよう

編集協力:小林裕幸(筑波大学附属病院教授)、吉村隆喜(育和会記念病院副院長)、
成井繁(グッドファーマシー株式会社湘南あおぞら薬局藤沢店、管理薬剤師) 
 
総務省消防庁によると、2020年8月だけで熱中症で救急搬送された人数は4万3千人。
2022年5~9月に救急搬送された人は7万人超で、大半が65歳以上である。
熱中症により高齢者が自宅で死亡する例が少なくないが、これには筋肉の
痙攣(手指の機能不全?)、自律神経系の機能低下(脳活動の低下により
119が思い出せない?)、服薬(低血糖・低血圧・筋肉弛緩)、腎機能不全、
老化などが関与している。糖尿病や高血圧に起因する循環器系疾患での早期死亡
(20~30年先のこと)を恐れて、「塩分×、糖分×、野菜〇、果物〇、水分〇」
を万民へ唱えるのはステレオタイプかもしれない。個人差を考え、水分補給の
繰り返しで起きうる真夏の低ナトリウム血症(頭痛、吐き気、筋肉の痙攣など)
や、野菜・いも・豆類・種実類・果物の過剰摂取を一因とする高カリウム血漿も
危険であることの啓発を同時にすべきではないだろうか。仮に1千人に1人が
上記に該当するとしても、1千万人いれば1万人もの数に上る。野菜、果物、
豆類、種実類などから日常的にカリウム摂取を推奨することは適切だが、特に
冬場での過剰摂取により、稀に高カリウム血症が生じやすく、心電図異常に
少なからず遭遇する。ごく稀に四肢(手指)の痙攣が生じることも臨床的に
観察されている。上記の症状が原因で自動車の運転ミス、農機具の誤操作、
転倒骨折、スマフォ操作不能などに陥るケースも想定できよう。つまり、
一方的なメッセージは危険性をはらんでいることに留意したい。栄養士らは
「果物の適量」を伝えているはずである。1日の歩数として5千歩以上の
推奨は良いが、2万歩となれば、ロコモ系に負担が増す。しかし、マラソンに
出るなら、その日は3~5万歩のrunと数千歩のwalkとなる。
標準的なメッセージとオーダーメイド(性差医療、老若差医療、服薬の有無)
の支援が肝要だ。以下のエビデンスにも留意しよう。

リテラシー①
 高齢者は塩化ナトリウム(NaCl)の保持能力が低下しており、
 低ナトリウム血症(筋力低下、食欲低下)に陥りやすい。

リテラシー②
 高カリウム血症では心電図異常(T波の尖鋭化、QT間隔の短縮、
 心室性期外収縮、心室細動といった不整脈)などが起きやすい。

リテラシー③
 腎機能や心機能が不良だと、水分やカリウム摂取のバランス調整に努める。

リテラシー④
 利尿降圧薬を筆頭に、皮膚への血流が抑制され体温調節にマイナス影響を及ぼす
 β遮断薬、Ca拮抗薬などは熱中症を引き起こしやすい。

リテラシー⑤
 利尿効果の大きい糖尿病薬(SGLT2)は脱水症から熱中症を引き起こしやすい。

【結語】
暑熱環境下において屋内滞在+冷房機作動+水分補給を唱えているだけでは、
一部の高齢者にとって不適切な健康支援(保健指導)になると言えよう。
ドラッグリテラシーの向上に努めるとともに、やや暑い日に気を付けながら
屋外へ出て暑熱順化を図るなど、熱中症防止策の行動着手は桜の花が散ったころ
からが良い。

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◆ Academic News ◆

【Journal of Sport and Health Science】
オーストラリアにおける2013年から2018年までの毎年の縦断調査から、
身体活動と不眠症状、メンタルヘルス不良との関連を検討した。メンタルヘルスの
良好な10,977人のうち、2,322人がメンタルヘルス不良となった。身体活動量(PA)
が高く不眠症状のない群と比較して、高PAでも不眠症状があるとメンタルヘルス不良の
オッズ比は1.87と高まり、中PAで不眠症状があると1.93、低PAで不眠症状があると
2.33のオッズ比であった。また、不眠症状がなくても低PAであるとメンタルヘルス不良の
オッズ比は1.14であった。このことから、身体活動量を高め、不眠症状を改善することが、
メンタルヘルスを良好に保つために必要であることが示唆された。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095254622000345?via%3Dihub

【JAMA Network Open】
英国のコホート研究に参加した40~73歳の438,583人(平均年齢56.5歳)を
平均12.8年間追跡した結果から、健康的な生活習慣と肥満関連疾患罹患との関連を
検討した。健康的な生活習慣は、非喫煙、定期的な運動、適度な飲酒量、健康的な食事
で定義された。健康的な生活習慣を持たない肥満である群と比較して、肥満であっても
4つの健康的な生活習慣を有していれば、高血圧(ハザード比0.84)、虚血性心疾患
(0.72)、不整脈(0.71)、心不全(0.65)、動脈硬化(0.19)、腎不全(0.73)、
痛風(0.51)、睡眠障害(0.68)、気分障害(0.66)の罹患リスクが低かった。
しかしながら、標準体重の群と比較して、肥満であると、生活習慣が良好であったと
しても、肥満関連疾患への罹患リスクは高かった(不整脈のハザード比1.41~糖尿病
のオッズ比7.16)。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2805328

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◆ 気になる健康関連ニュース ◆

□ 厚労省 「働く人の熱中症ガイド」公表

これから熱中症の傷病者が増加する季節となる。厚労省が発表した「令和4年
職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、4年の熱中症の
死傷者は827人、死亡者は30人で、うち10人は6月中に発生した。熱中症から
命を守るため、厚労省は、「働く人の今すぐ使える熱中ガイド」を5月29日に
ホームページ上に掲載した。ガイドは、自分たちでできる基本的な情報を紹介
したもので、具体的な対応策をまとめている。「熱中症から命を守る」、
「危ない状況と対策」、「予防法」、「取組例」、「熱中症の基礎知識」、
「事業主、安全・衛生管理担当者の方へ」、「まとめ」で構成されている。
資料は、全体的に極力文字を減らし、視覚に効果的に訴える内容としている。
また、項目ごとにPDFを掲載しており、ダウンロードして活用できる。
厚労省は、建設や製造等の従事者だけではなく、学校や一般市民などで広く活用
するよう呼び掛けている。

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◆ お知らせ ◆
□次号の発刊は、令和5年7月31日(月)です。
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もうすぐ今年も半分が終わります。毎月、毎年、あっという間に過ぎてしまい、
同じ日々を過ごしてしまいがちですが、目標を持って生活したいと思います。

【発行】株式会社THF( support@thfweb.jp
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